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きままなパーティー / 三浦康嗣

1998年結成。人間の出入りは多いし、たまにしか集まりませんが、その瞬間の空気を大切にしています。 / 村田シゲ

このグループっていうか、座組っていうか、結社っていうか、ユニットっていうか、セッション体っていうか、チームっていうか、ネットワークっていうか、縁っていうか、宇宙構造っていうか、そこからまずわからない。 / いとうせいこう

□□□です。クチロロと読みます。音楽レーベルHEADZからデビューをして、坂本龍一さん主催のレーベルcommmonsへ移籍。その後もたくさんの作品をリリースしています。さて、1998年に三浦康嗣がスタートさせたこのフリーフォーム的運動は様々なことをしています。ぼくがイメージする□□□史を語ると、最初は仲良い友達で集まって、音楽やったこと無い人たちが音楽をはじめちゃって、そのうちにバンドっぽい雰囲気になって、CDデビュー出来る事になって、作ったCDが話題になってメジャーデビューが決まって、メンバーの出入りが多くなって景色が変わりはじめて、村田シゲやいとうせいこうが□□□に加入して、演劇やダンスのジャンルの人々がワイワイ周りに集まってきて、スカイツリー合唱団という大所帯のコーラス隊を作ったり、ぼくが□□□ライブのサポートに入ったり、劇団ままごと『わが星』という素晴らしい演劇作品の音楽を三浦さんが担当して□□□とコラボしたり、『ファンファーレ』という舞台作品を作ったりもして…と、実に□□□は結局何をやっているのかわかりません。だけど、□□□メンバーが集まった途端に台風の目がそこに出来上がり、たくさんの人々が□□□に引き込まれ、巻き込まれ、トルネードして圧倒的なチカラで環境が出来上がります。嵐が過ぎ去った後は、あれだけ振り回しておいてちょっと寂しい気分にまでさせてくれる。というか、私たちも□□□のメンバーなのかな?他人事に巻き込まれるのもそんなに悪くない感じ。ぼくはこんな素敵な音楽をやっている出来事に出会ったことが無いです。 / 蓮沼執太

なぜこの3人が音楽ユニットとして集まっているのか。漠然と不思議に思います。
そのことについて、考えていてもあまり分からないので、自分の職能を生かして、3人に心理検査を実施してみました。

その結果、□□□とは、
「3人の、その場のムードに流されやすく、特技が少しずつ違い、想像力やユーモアに溢れた構成員が、概ねその時の気分で活動している団体」ということが分かりました。気まぐれな店主が3人いて、何だか楽しげだけど何屋さんか分からない、でも屋号はあるお店、そんな感じです。

3人が気ままに、自分の周りの人を呼び込んだりするので、ヒップホップやエレクトロかと思えばラジカル・ガジベリビンバ・システムの人がアルバムに参加したり、演劇やアートに寄ったり、イケてるロックバンドとコラボしたり、その他にも色々あり過ぎて、活動の軸がよく分かりません。

一貫した、軸となる活動理由やコンセプトはなく、それ故に、ほとんどのアーティストが帯びやすい「色」や「宗教性」は感じられず、ただ、通底して「なんとなく、いい感じ」を纏っているという印象です。
これは、一見中身がない、言い換えると遊びのある中空構造を保った上で、3人の誰もが時によって軸になる、多中心的構造を呈しているという状態で、この状態を維持できる共同体というのは珍しいように思います。

しかし、この点は、この団体にとって弱点でもあります。
なぜなら、通底した宗教性や哲学がないという状態では、多くのお客を巻き込むことがなかなか難しいからです。色々な人が参加して、時には合唱団のような大所帯にまでなるのに、いわゆる「トライブ感」が感じられない。的確なキャッチフレーズも思いつかないし、大体、プロフィールを人任せにしているんですよ。これでいいんですか!?

とはいえ、この「なんとなくいい感じ」に魅了される、曖昧さ肯定群は、僕も含めてしっかりと存在していて、そのような群に大いに愛されながら、これからもなんとなく在り続けるのでしょう。

素敵ですね。

こう考えると、中空な□が3つ並んだ、馬鹿馬鹿しいような、意味ありげなような、人を食ったような□□□という表記こそ、このユニットの体を表しているような気がします。

≪それぞれの分析結果≫ ‐在籍日数の順に‐
【一人目】想像力、ユーモアに溢れ、自由奔放で明るい。一方で、面倒見がよく他人との協調性も持ち合わせている。その為、飲み会によく誘われるなど、人から好かれる。一言で言うと「天真爛漫なアイドル」。基本的には対人関係においてバランスを保てるが、自由奔放さが行きすぎると、わがまま、自分勝手、と他人からうつることもある。また、情や気分に流されやすい面もある。
確かに、基本的には自身の作品ほか、作家としての仕事のほとんどにおいて、その時の気分や流れに任せて創作している?と疑わせるほどの作風の多彩さを持つ。その作品は縦横無尽なアイデア、ユーモアに溢れ、時に既成概念を覆すほどだが、その奔放さ故、ジャンルも作家性もつかまえ切れない傾向にある。
そんな、気鋭の音楽作家。

【二人目】アイデアや想像力が豊かで明るい。他人に対して甘やかしたり、過保護になるようなことは基本的にはなく、比較的責任感があり、自身の理想を追求する面もある。そのため、集団をまとめたり、仕切ることが出来る。協調性も比較的高く、現在の責任感と協調性から考えると、コミュニケーション能力は高いと言える。ただ、特に協調性に関しては後天的要素が強い可能性があり、以前は、他に合わせるよりも自分の信念に従う面が今よりも強かったかもしれない。時に、気分に流されやすい面もある。
確かに、信頼できる演奏技術や気高さ、そして溢れるユーモアを持つ。演奏家として多忙な現状はその証とも言える。□□□でも、ライブ時はバンドマスターの役割を担い、まとまりなさを極める演奏陣を率いる。また、なぜか日本最大の音楽番組専門チャンネルのUstream番組において、ミュージシャンとは思えないほど見応えのある司会を数年にわたり務めていた。これも、ユーモアと協調性、そしてある程度の責任感の賜物と言える。
そんな多才で頼れるベーシスト。

【三人目】ユーモアやアイデアが豊富で、他人に対する思いやりがあり、面倒見が良い。また、良いと感じたものに対して、しっかりと共感を示す傾向にある。アイデアと面倒見の良さから、他人に対して有用なアドバイスする、後進のフックアップをするなどの行為に至ることが少なくない。一方で、色々な環境、状況に順応する能力も高く、それぞれの環境で創造性を発揮することができる。しかし、順応力が過度になると、人にどう思われているか、など神経質になり過ぎる可能性がある。また、情や気分に流されやすい面もある。
確かに、多岐にわたった独創的な作品、活動で、日本のカウンターカルチャーを開き、今なお牽引する。また、後輩にアドバイスを与えた、自宅で大宴会を催した、などのエピソードも少なくない。活動内容は非常にバラエティ豊かで、その創造性と順応性を生かして、それぞれの分野で揺るぎない作品を残す。□□□でもその面は発揮され、基本的にはラップを担当するが、曲によってコーラス、マイクロコルグ、iPhoneアプリでの演奏、オリジナルフリスクでのパーカッション、そして時報係と、変幻自在の役割をつくり出している。
そんな、レジェンド感さえ漂う小説家、ラッパー、俳優、芸人、ベランダーなど。
/ 星野概念